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手術の朝 (
written in 1998.5.15
)
颯ちゃんとは いつも対等だったよ。
ウソは言わず、赤ちゃん言葉も使わず、どんな事もきちんと説明していた。
だから手術の必要性・・・それがどんなに難しいのか、そんな話もしたね。
新生児とは思えないくらいいろんな事ができて、理解もしていたね。 そんな颯ちゃんに ママはいつものように言った。
「手術が終わったらしばらくCCUにいなきゃならないけど、
ちゃんとここに帰ってくるんだよ。
それで早く退院してキャンプ行こうね。」
「だけど、もしどうしてもがんばれなくなったら
颯ちゃん一人で神様のところへ行くのは淋しいだろうから
ママが一緒について行ってあげようか?」 たった一度だけ そう言ってしまった。
なのにその瞬間、
思いっきりの笑顔で「ウレシイ」って言ってくれたね。
本当に、嬉しいって笑ったんだよね。
こんな運命なのに ちっとも怒ってないんだって初めて感じた。
「ずっと一緒だよ、守ってあげるよ、外は楽しいことがいっぱいだよ」
って、いつもお腹にいる颯ちゃんに言ってた嘘つきなママなのに。
・・・きっと颯ちゃんは、 初めから全部わかって生まれてきた天使なんだね。
次の日、手術の朝。
30分だけの面会で突然泣きだしたね。
たくさん言いたいことがあったんだよね。
ママもパパもただ涙がとまらなくて、
ちゃんと聞いてあげられなくてごめんね。
手術室に向かう途中、
じっとママとパパを見つめてたね。
ずっと見つめてたね。
麻酔が効きはじめて泣くこともできず、
目ですべてを語ってたんだよね。
そして この瞬間を焼きつけてたんだよね。
「サヨナラ」って、ママにだけ聞こえた。
颯ちゃんは 天使に戻った。
そして毎日 きっとほかの赤ちゃんのところへ行って
いろんな話をしてあげてるんだよね。
だけどママは
あの日、颯ちゃんが何を伝えたかったのか
今もわからずにいるよ・・・