風の馬〜天使の贈り物〜

写真:颯馬 写真:颯馬 写真:颯馬

 

 緊急入院 (written in 1998.6.1 )

 
5月29日。

颯ちゃんが生まれた病院で
「大丈夫だと思うけど心雑音があるから診てもらって」
と、紹介されて予約した専門の大きな病院。

心臓に穴が2つ開いてるけど自然に治ると言われた赤ちゃんや、
実は生まれた時に穴があったけど今はもうないという
友人を知っているから、脳天気なママはあまり心配もせず
「さぁドライブだ!」って パパと3人で車に乗って出かけたんだよね。
朝早くバタバタと、おじいちゃんおばあちゃんの家から。

「午後帰るね、行ってきま~す」


 

 
受付をしてから検査。
レントゲンに心電図や採血、こわくて痛くて泣いちゃったね。
結果を聞くまでに何時間も待ったね。
その間に診察室から出てくる人達が「次は1ヶ月後に来て下さい」とか
「半年後に来て下さい」「3ヶ月後に・・・」って
看護婦さんから言われているのを聞いて、
「こんな遠くまで何度も通うの大変だね」なんてのんびりパパと話してた。


まさか緊急入院になるなんて!

もう二度と家に帰れなくなるなんて・・・!


 

 
病棟に移り、颯ちゃんは更に検査。

「入院してください」と言われるなんて
思わなかったママは、外来からずっと泣きっぱなし。
パパに「治すために入院するんだから」と、何度も言われた。

何時間待っただろう?
やっと担当医師が現れた。
心臓の絵にいろいろ書き込んである紙を見せながら、説明してくれた。


病名は、 左心低形成症候群。
ママは真っ先に、その紙の一番下に書いてあった
<手術が非常に難しい。手術しない方が長期生存できる場合もある。>
という文を見て 頭の中が真っ白になり、
何が何だかわからなくて ただ泣いてた。
パパも泣いてた。

受け入れることなんてどうしてもできなかった。


 

 
話が終わって放心状態のママ達は、
病棟で疲れて寝ている颯ちゃんとやっと会えた。
胸と左足に心電図の線、左腕に24時間ずっとの点滴をつけて。


担当の看護婦さんが、颯ちゃんを見ながら
ママとパパに「がんばろう」って、静かに言った。


 

 
颯ちゃんとは生まれた病院でも同室になれなかったし、
退院の日も違っていたから、たった8日間しか一緒にいないのに
また離ればなれ。一日の4分の1だけの面会。
とっても とっても淋しかったよね。

もっといっぱい抱っこしてあげたかった、
ミルク飲むの下手でいい、母乳なんか飲めなくたっていい、
お風呂も嫌いでいい、夜泣きしたっていい・・・
だから颯ちゃん、帰っておいで!!


 

 
・・・颯ちゃん、
これを読んでくれる人達みんなが幸せになったらいいね。
同じように子どもを亡くした人や
育児でちょっと疲れてるお母さんが これを読んで
がんばろうと思ってくれたらいいね。

颯ちゃんが天使になってすぐの頃は、外に出ると
颯ちゃんぐらいの子を見て気が狂いそうだったママなのに
ホームページを作って お友達もできてちょっとだけ元気になったよ。

颯ちゃんには何もできなかったママだけど、
ほんの少しだけ誰かの役に立てるかもしれないね。