風の馬〜天使の贈り物〜

 入院中の医師の説明

心臓の図が載っているプリントに毎回いろいろ書き込んで説明していただきました。  その文章のみをここに載せます。


1997.5.29

左心低形成症候群
生まれつきの心臓の病気→最重症の病気

左心系(左房、左室)と大動脈が非常に小さい 体への血液は肺動脈から唯一、動脈管を通じてのみ流れている
動脈管を閉じることは即、命取りになる
手術が非常に難しい
手術しない方が長期生存できる場合もある
とりあえず入院治療(内科的)必要→利尿剤、強心剤、プロスタグランジン製剤(動脈管を開いておく薬)

入院治療計画書
病名・左心低形成症候群
症状・心雑音、チアノーゼ
治療計画・利尿剤、強心剤、プロスタグランジン製剤
推定される入院期間・平成9年5月29日~平成9年7月31日、これ以上となる可能性が高い


 

1997.5.31

左心低形成症候群
最重症の心臓の病気
通常3ヶ月以上の生存は不可能(少数の例外)
颯馬くんの場合、大動脈以外は良い条件である


治療方針
 1.手術・3期に分けての手術、最終段階までの到達・・・??、当センター15人程度→1人のみ生存
 2.心臓移植・日本では非現実的
 3.内科的サポート・最長2歳~4歳(1人のみ)平均30日前後、91年以降60日前後

手術の場合
生後1ヶ月以内が理想、肺への血流のコントロール困難、長期間の人工呼吸・薬で寝た状態
内科的サポートの場合
帰宅の可能性、ミルク飲める
当センター40例→内科的28例、手術12例

6月2日までには結論をお願いします

 

 
1997.6.3

左心低形成症候群
プロスタグランジン製剤→動脈管よく開いている
利尿剤、強心剤の内服→ミルクまずまず飲めている、排尿も良い
手術は来週予定
手術前にもう一度くわしい説明を予定しています
また手術前に必要な点滴処置をおこないます

 

 
1997.6.9

左心低形成症候群
最も重症の心疾患
今のところ血液の流れは安定している(動脈管の開き具合、心房間交通)
6月12日(木)手術予定
全身麻酔(人工呼吸)、人工心肺
手術は人工心肺を使用→長くなると脳合併症
手術室にてうまく心臓が動き出すかが1つの山
手術そのものが非常に難しい
体への血液と肺への血液のバランス→手術のあとも非常に管理が難しい
冠動脈(心臓の筋肉を動かす)の問題
ノルウッド手術、右BT手術予定(変更ありうる)
ノルウッド手術→太い肺動脈の壁と細い大動脈の壁をぬいあわせて心臓(右心室)から血液を体に流す
右BTシャント手術→右鎖骨下動脈(右手へ流れる血管)と左肺動脈とを人工血管でつなげる(肺へ血液を流す)
術中術後の管理が非常に難しい
うまくいったとしても人工呼吸器がとれるのは相当の時間を要す(数週間)
救命できる方法としては手術しかない
しかし成功する可能性は極めて低いといわざるを得ない
心配な点→大動脈が非常に細いこと
また今回の手術がなんとか乗りこえられたとしてもその後も何度か手術が必要になる 6月12日、手術は8:30に入室~19:00頃(順調にいって)

その後集中治療室へ
心臓の状態がおちつき、自分でしっかり呼吸ができるようになれば呼吸器をはずし、一般病棟へ

 

 
1997.6.9 手術説明


ノーウッド手術(大動脈再建、体肺動脈短絡、動脈管閉鎖) 6月12日(木)8:00来院、8:30手術室へ 8時間くらいかかる
CCU管理→病院待機
人工心肺使用・循環停止心停止下に手術→脳合併症心筋障害の可能性 左心低形成症候群
(心房中隔欠損、肺高血圧症、動脈管課開存、僧帽弁閉鎖、大動脈弁閉鎖)
1.重症心不全状態、成績不良の先天性心疾患、内科的治療では生存数ヶ月
 予定術式(ノーウッド手術・開心姑息術)
2.手術の危険大(長期生存は1例のみ)
3.合併症(低酸素血症、心不全、脳合併症、腎不全、肺合併症、感染症、輸血合併症など)
4.将来的問題
  再姑息術の可能性(シャントなど)、根治的手術に到達する可能性は多くない 一酸化窒素吸入療法
1.人工呼吸に際して一酸化窒素(NO)を吸入する方法で、肺血管の抵抗を下げる目的
 有用性は世界で認められているが日本では医療ガスとして認可されていない
 当センター倫理委員会は承認
2.合併症
 直接毒性(臨床量ではまず問題ない)
 メトヘモグロビン血症・肺水腫→長期大量ではありうる
3.無効、重大な合併症発生、家人の希望にて中止いたします 「手術・麻酔・処置・特殊検査・特殊治療・輸血などについての説明・同意書」

同意を求める医療行為の名称
左心低形成症候群に対するノーウッド手術、術後NO吸入療法

説明
目的・必要性、医療行為の手技・内容、施行した場合予想される経過・しなかった場合予想される経過、他に考えられる方法、麻酔方法、麻酔に伴いうる術中術後の合併症、輸血について

 

 
1997.6.12 20:00


現在、人工心肺をはずして様子をみているところ
出血非常に多く、コントロール難しい
血圧や酸素の状態はギリギリのところ
状態は非常に厳しい
胸を閉じずに集中治療室に戻ってこれるかどうか